<なな会だより>近況報告リレー 16期生”大久保武尊さん”【後編】

夢に挫折して辿り着いたサードプレイス自分を好きでいられる場所を目指して

宮崎県宮崎市の若草通りにあるカフェバー「アクターズスクエアコーヒー」
宮崎の文化の発信拠点として常に生まれ変わり続けるこの場所で、2016年にお店を開いたのが
16期生の大久保武尊さん(31)だ。

「家でも仕事場でもない第3の自分でいられる場所」

となることを目指して今も進化を続けるお店への思い、そしてアフターコロナの展望を聞いた。

今回は後編です!
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<なな会だより>近況報告リレー 16期生”大久保武尊さん”【前編】

ふたたび、宮崎へ

偶然とも言えるほどのタイミングでの連絡だったが、実はオーナーから話を聞いたその日は、それほど心が動いていたわけではなかった。自分へ向けられた話はないような気がして「そうなんですね」と応えて、オーナーとは別れた。

翌日、家でのんびりしていると、ふと頭の中を考えがよぎった。

「翌日に家でのんびりしていると、『あれ、俺お店をやりたいな。やれるな』って思えてきました。アンティークショップで働いたことで、甘かった自分に気づけ、お店を作ることや売上のことを叩き込んでもらえた。カフェバーでの経験もプラスになっている。まだまだ足りないところはあるけど、多分大丈夫かなって」

お店を構える宮崎市の若草通り

その考えにたどり着いた瞬間に電話が鳴った。

「あの話なんやけど、武尊はどうかなって思って」

オーナーからの問いに、もう心は決まっていた。2015年11月、再び宮崎へ行く準備を始めた。

その年の12月には宮崎に入り、カフェでの働き方に体をならすため1ヶ月間はオーナーの店で働いた。大晦日にオーナーの店がクローズ。新年を迎えると同時に、自分がオーナーとなっていた。

「お金は全然なかったので、簡単な内装をやっただけでした。当時はアンティークショップで働くという本当にやりたかったことを失っていた時期だったので、もう何も失うものがなかった。不安も期待もあったけど何とかなると思っていた。足りない部分は営業している中で成長していけばいいと思っていたんです」

自分の性質に合った演じ方をできる場所に

お店を引き継ぐときには、コンセプトも経営方針も店名も変えようと決めていた。その考えの土台となったのが卒論でカフェをテーマにしたことだった。

家でも職場でもない第三の場所(サードブレイス)について深く考えた時間は、年齢とか立場によって使われ方やお店の枠割が変わってくることに気付かされた。宮崎公立大学東門近くにあった「珈琲茶館」を対象にしたフィールドワークでは、大学の教授、近所のおじいさんやおばあさん、そして学生がいるという不思議な空間を味わせてくれた。

「目的性がない空間にできたらいいなって思ったんです。人はみんな家での役割も職場での役割も辞めて自分に戻るっていうのは、もうできない。だったら自分が好きな、自分がもっと好きになれる場所を作ろうっていうアプローチでお店をつくろうと決めました」

店名は「アクターズスクエアコーヒー」。自分の性質に合った演じ方をできる場所、公園のようにそれぞれが気ままに過ごせる場所、お客に合わせてお店も役割を変えていく場所にしていきたいとの思いを込めた。

「まずは土台のコーヒーを作っていくことにしました。普段の営業でしっかりと美味しいコーヒー、おいしいお酒を出して、みんなが『いいよね』って言ってくれる場所でありたい。その上でイベントやパーティーの貸し切り、結婚式の二次会ができて、みんなが満足できる場所にしていこうと思ったんです」

短い期間とはいえカフェでの勤務経験はあったが、実際に自分でお店を回してくことは別物だった。知識や技術は足りない、スタッフを雇用していくことも難しい。壁にぶち当たり続けても、最初に決めた「営業しながら勉強していく」の言葉通りに実行していった。

あの珈琲茶館のように

オーナーから引き継いだとはいえ、店名も変えてゼロからのスタート。「今まで宮崎になかったお店」を目指してきた結果は、お客さんの数という結果で表れた。徐々に知名度は上がり、貸し切りの予約も入るように鳴った。売上は次のアンティーク家具の購入へと使い、全国各地のアンティークショップから取り寄せた照明などで理想の店へと近づけていった。

それだけでなく、毎週水曜日には英語のネイティブスピーカーと会話を楽しむ「英会話カフェ」を企画。その英会話カフェでの出来事だった。

こだわりと気持ちを込めて出す1杯のコーヒー

ある日、友達と来店した高校生と話していると

「さっきうちのお父さんも来ていたみたいです」

別の日には年配の女性から

「息子がよく来ているみたいなのよね」

と教えてくれた。

「そういうのすっごく嬉しかったんです。珈琲茶館での経験から、自分の店でもいろんな年代の人が立ち寄れる場所にしたいというのがあったので。普通に来て普通に帰るだけなんですけど、年代とか立場に偏るわけでもなく、普通に着てくれていることが嬉しかった」

逆に力を入れてきたコーヒーづくりでの悩みもある。

「インスタ映えに捉えられてしまうようなドリンクがたくさん出てしまったときは、単純に僕たちがやりたいことじゃないよなって感じてしまって。消費対象として見られているなみたいなことを考えてしまって。流行りに乗るような形になったら、それは僕らがやる意味はないよねって、そういうメニューをなくしたりもしました」

そうした試行錯誤の中で4年ほどが過ぎ、当初に目指した営業スタイルが出来上がりつつあった。「これからもスタッフのみんなには頑張ってもらいたい」と給料を上げたタイミングで始まったのが、

 

新型コロナウイルスの流行だった。

 

アフターコロナを見据えて、今やること

宮崎県内で感染が確認され始めた2020年春ごろから、お店のある宮崎市の中心部、若草通りでも目に見えて人の往来は少なくなった。

「うちは個人店のわりに、お店の規模が大きくて家賃も高い。これまでの営業努力で、貸し切りなどの大きなイベントに頼らずに一般営業である程度の売上は確保できるようになっていたんですけど、コロナ禍では一般のお客様の足もなくなってしまって、本当にギリギリでした」

緊急事態宣言が発令されたときはお店も休業。上げたばかりのスタッフの給料を下げることはどうしても許すことができず、自分自身の給料をゼロにすることも一度だけではなかった。周囲ではテイクアウトや宅配を始めるお店も出てきたが、どうしても手を付けることができなかった。

「めっちゃ考えたんですけど、うちはそれをやっちゃダメ。そもそも僕がそれをどんな顔して売ればいいのかわからなかったんです。周囲で頑張っている飲食店の人たちに失礼だよなあって。それができないって思うと単純に苦しくて。じゃあどうしようって悩んだ結果、コロナ明けのことを見据えることにしました」

まだまだ、もっといいものをみなさんに見せたい

そこで着手したのがお店の改装。大きなイベントが入らないことをプラスに捉え、思い切って2021年3月に一時休店。初めて金融機関から借り入れを行い、今まで気になっていた部分を一気に手を加えた。

「今まで場所や空間が大事って言い続けてきた店としての意地があって、サードプレイスの価値では絶対に負けたくないし、忘れたくなかった。絶対にそこに帰ってくるはずだって信じるしかないなって思って、コロナが明けたときにお客さんを迎え入れられる準備をはじめました」

その一つが大きなバーカウンター。お客と会話しながらでもお酒を作れるよう、カウンターの高さを低く調整し、ボトルのディスプレイも装飾性と機能性が両立するように工夫した。再びイベントが復活したときのために、店奥にステージが作れるようにテーブルやプロジェクターを配置した。

そして念願だった焙煎機も導入。豆の焙煎からドリンクの提供までを一貫してできる体制を整えた。

ビルの1階にある階段

「今まで足りない部分はあったけど、とにかく頑張って少しずつ自分たちなりの正解を探してきたのに、世間一般で言われている”いいコーヒーショップ”や”いいバー”っていうものに寄せちゃってたことに気づいたんです。周りの目に囚われてきた部分があった。いいコーヒーショップになることも一つではあるんですけど、それは一つの要素であって、いろんなものが組み合わさって自分たちのお店になるんだよなって。コロナの期間は周りの目を気にすることがなくなって、自分たちのお店づくりのコンセプトを再認識する時間でもありました」

大規模な改装が終わっても、理想とする店にはまだ到達していないという。オープンして5年が過ぎた。宮崎はお気に入りの場所だからこそ、これからもチャレンジは続く。

「自分たちがいいよねって思える理想のために、少しずつ変えていっていますね。焙煎機もその一つですけど、まだまだ入門機レベル。もっといいものも欲しいし、道具に関してもまだまだ欲しいものがたくさんあります。アクターズっていう店名にもあるように、決まった使われ方に囚われずに、いろんな役割を持っているお店っていうのを、みんなに見せていけたらいいなと思っています。そして、こことは違うテイストの2店舗目、3店舗目を展開できるようにしていきたいですね。」

店舗情報

アクターズスクエアコーヒー
宮崎県宮崎市橘通東3丁目6−34 クロノビル2F
営業時間 : 11:00 ~ 24:00
定休日:火曜日、第3月曜日
TEL : 0985-26-8577
HP:https://www.actors-sq.com/

 

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